今回から動物を描いた
複雑なエンブレムを見て行きましょう。
2 図形(複雑なデザイン・動物)2.1
図1 スカニア スミスEV1 中天 トヨタ・ソアラ ギャツビー アームストロング・シドレー1
鷲の頭に有翼でライオンの身体をしたギリシャ神話の怪獣
グリフィン/グリフォン - Greif - griffin, griffon, grifon, gryfon, gryphon - griffon, grype
は西欧ではかなり好まれている意匠です。ドイツのバルト海沿岸にはグライフスヴァルト(Greifswaldグリフォンの森)のようにその名を冠した大学都市があります。多くは最初に挙げたスカニアのように大きな嘴の鷲頭ですが、中にはライオン頭のもいて、これはライオン・グリフィンとも呼ばれています。グリフォンはゼウスやアポロンなど神々の車を引くと言うところから、道路を席巻する王者を象徴しているのでしょう。VW傘下のバスやトラック生産のスカニアは創業地スウェーデンのスカニア地方マルメ市の紋章にあるギリシャ神話のグリフォンをエンブレムにしています。これは今ではそのブランドが停止となった、後に見る乗用車メーカー・サーブのエンブレムとほぼ同じエンブレムで、両社は提携していたこともあります。二番目からの、一度生産停止となり、五龍電動車(FDG)により再興された米スミスEVやその次の天津市の中天特車(Sentechsv)、北米にレクサスとして輸出されていたトヨタのソアラはライオン・グリフィンをエンブレムとしていました。ソアラはその後、国内にもレクサス・ブランドが出回り、ブランド名が消失することになりました。カリフォルニア州のギャツビーは1979年から乗用車やキットカーの生産を始め、スペクターを継承したグリッフィンなども出しましたが、1998年にJPRカーズに買収されました。第一次世界大戦後の英国でアームストロング社の子会社となったシドレー社は、アームストロング・シドレー社としてスフィンクスの立体エンブレムを付けた高級車や航空機エンジンを生産していましたが、1960年に生産停止となりました。
図2 ホールデン プジョー プジョー(現) 恒大 敏安 伽途 フラディエッシュ
ライオンをエンブレムとしているのは、GMの傘下で今は生産を中止したオーストラリアのホールデンです。ある時ライオンが石を転がして遊んでいるのを見た人がそこから車輪を発明したと言う伝説を基にしていると言うことです。ステランティス(プジョー・シトロエンPSA+フィアット・クライスラーFCA)の筆頭プジョーは、元は鋸(のこぎり)やコーヒーミルなどの鋼製品のメーカーで、その刃の切れ味の優秀性を百獣の王ライオンで象徴していましたが、これを受け継いだものです。新エンブレムはブランド名も入れていますが、これは1960年代に一時使われていたものを簡素化したものです。EVの恒大(Evergrande)新能源の恒馳(Hengchi)ブランドは地球に前足を乗せたライオンです。既に見た敏安(Minan, Minth)汽車のライオンは、後に見る伊グレカヴのエンブレムから社名を除いたものです。北汽福田の伽途(Gratour)ブランドも王冠を戴いた双頭のライオンですが、スカニアに似ています。印フラディエッシュは、超豪華なカスタムカーを提供しています。社名はサンスクリット語の「心の帝王(Emperor of Heart)」から来ています。
図3 サンビーム1 王牌 ミクロ 雲雀 2 福瑪 MAN1
20世紀以前からあった英サンビームは、第一次世界大戦後にタルボに買収され、後にはバスなどを生産していました。戦後には1950年代のロードスター・アルパインが有名で、クライスラーに属していましたが、1982年にブランドは廃止されました。中国重汽と四川省成都・王牌(CDW)汽車のJV・重汽王牌(Sinotruk Wangpai Motor)汽車もライオンです。スリランカのマイクロカーや小型自動車を生産しているミクロは、韓国の雙龍(サンヨンSsangYon)と提携して大型車、中国企業と提携してバスなども出しています。既に見たスバルと貴州・航天(Hangtian)とのJV雲雀(Yunque, Lark)汽車は、後に見るヨーロッパスターや蓮華と同じまたは類似したライオンのエンブレムを使っていました。雲南省の福瑪(Fuma)新能源は低速EVも出していますが、ライオンのエンブレムが実際に付いているかどうかはよく分かりません。VW傘下でトラックやバスなどを生産しているドイツのMAN(マン)の社名はアウグスブルク・ニュルンベルク機械工場(Maschinenfabrik Augsburg-Nürnberg)の頭字語で、ライオンと半円のエンブレムがあります。
図4 モナーク 東風風行 いすゞ117クーペ ライオンズ=ナイト キメラ
マーキュリーをベースとしたモナーク(君主)は、フォードがカナダで1946年から1961年まで販売していたブランドです。高級車ブランド・東風風行(Forthing)は「自信無畏、勇猛向前」を新エンブレムに表現したと言っていますが、ランボルギーニの牛を獅子に変えただけのように見えます。かってイタリア人デザイナーのジウジアーロが手掛けた“走る芸術品”いすゞ・117クーペは、「東洋を象徴する何か」と言うことで唐獅子がエンブレムとなっていました。1913年から1915年にかけて、インディアナ州でライオンズ兄弟がライオンズ=アトラス社を設立し、ライオンズ=ナイトのブランド名で乗用車を生産していました。伊キメラは、ランチアをベースとしたスポーツカーを出しています。エンブレムはギリシャ神話の怪獣キメラを同じくグリフォンに見立てたものでしょう。
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図1 Scania, Smith EV 1, 中天高科特殊車, トヨタ・ソアラ, Gatsby Coachworks, Armstrong Siddeley
図2 Holden, Peugeot, Peugeot 2021, 恒大新能源恒馳汽車, 敏安汽車1, 伽途 (Gratour), Hradyesh,
図3 Sunbeam 1, 重汽王牌汽車, Micro, 雲雀汽車 2, 雲南福瑪新能源, MAN 1
図4 Monarch, 東風風行, いすゞ・117クーペ, Lyons-Knight, Kimera Automobili