今回から
複雑で絵画的なエンブレムを見てみましょう。
2 図形(複雑なデザイン・紋章) 1.1
図1 キャデラック キャデラック・リリック 吉利 幾何 帝豪
1950年代の金持ちの象徴となっていたゼネラルモーターズ(GM)のキャデラックはカラフルな創業者の家紋を使っています。そのEVのリリックはこれをモノクロ化してシンプルにしています。“民族系”浙江吉利控股集団(Geely)、また検索サイト百度と吉利の電動ブランド・集度汽車、それに吉利独自の電動ブランド(吉利新能源)・幾何汽車(Geometry)、さらに吉利の高級車サブブランド帝豪(Emgrand)などのエンブレムはキャデラックを見本としたものでしょう。
図2 ビュイック 奥新 ヤマハ ネオリオン イクソモーティヴ 紅旗1 カルマ
キャデラックと同じく古くからのゼネラルモーターズ(GM)のブランド・ビュイックも創設者の家紋です。江蘇省塩城の奥新(Aoxin)新能源はその名の通りEVを開発していますが、そのエンブレムはTのようにもVのようにも見えます。二輪車メーカーのヤマハ発動機は、元は創業者名山葉のピアノ・メーカーだったので、音叉が図案化されたエンブレムです。トヨタと四輪車を共同開発したり、スーパースポーツカーOX99-11を製造したりしていますが、四輪のコンセプトカーや低速EVを発表したりしています。ギリシャの造船大手ネオリオンは、1970年半ば4輪駆動オフロード車のシカゴを発表していました。デザイナー本人が山の恐竜(mountain dinosaur)と言ったように、当時としては強面でしたが、現在の豪華版SUVの先駆と言えるでしょう。米国国旗はキットカーの行動も走れるレーシングカーを提供している米イクソモーティヴです。紅旗の旧エンブレムは、向日葵の花に共産党の赤旗三枚をあしらったものです。エコカーとして名を挙げたフィスカーの破綻後、その1号車をレオナルド・ディカプリオが購入したハイブリッド・プラグイン車カルマを万向(Wanxiang)集団が買収して立ち上げたカルマ(卡尔玛汽車)のエンブレムは、碧玉、妖しくも青く輝く玉です。
図3 ケーニグセグ SSC チャンドラー1 ヴィニャーレ コード ダッガーGT カールマン・キング VL アダマストール インフェルノ ヴェアヴォルフ
創業者の家紋を基にしているスウェーデンのスーパーカー製作メーカーであるケーニグセグは、EVのスポーツカーを出しました。米ワシントン州のスーパーカー・メーカーのSSC(Shelby SuperCars)のエンブレムには、上の帯に「真理に勝利あり」(In Veritate Victoria)、下に角のある鹿の頭が入っています。オハイオ州クリーブランドの、ロジエーの技師をしていたチャンドラーは、第一次世界大戦前から独立して大衆車を造っていましたが、大恐慌でハップ・モーターカーに吸収されました。伊ヴィニャーレは戦後創設されたカロッツェリアで、創業者の死と共に消滅しましたが、商標権はフォードが持っていて現在でも豪華なヴィニャーレ仕様として使っています。エンブレムはイニシャルのVに、トリノ市のランドマークであるモーレ・アントネリアーナの尖塔でしょう。インディアナ州のオーバーン自動車の高級車ブランドで、持株会社名を冠したコードは、1929年から1932年まで、1936年に再興され、1937年まで生産していました。時速483km(300mph)と世界一のスピードを誇る、米トラン・スター・レーシング(TranStar Racing)のツ―シータ―・ハイパーカーは、車の前後はすっきりとエンブレムなしで、両サイド後方に短剣マークのみ、ブランド・レタリングのみ、マークとレタリング両方と3種のバージョンが見られます。世界一高価なSUVを製造しているカールマン・キングは北京の独立系自動車エンジニアリング会社の阿尔特(中国)汽車技術(IAT自動車技術)のブランドで、社名がなぜカール大帝の弟のカールマン1世なのは分かりませんし、エンブレムも槍かドラゴンか、よく分かりません。米ミシガン州にスーパーカー製造工場を持つVLFは、最初はVLで創立者ヴィラリールとルッツ(Villarreal & Lutz)の二人のイニシャルでしょう。ポルトガルのアダマストールは、公道も走れるレーシングカーを発表しています。アダマストールとは、大航海時代に自然の猛威の表現となった伝説的な海の巨人で、リスボンにその像が立っています。地獄の使者のようなエンブレムは、メキシコのハイパーカー・インフェルノです。1988年創設の露オプティマは2007年にキャデラックのエンジン、メルセデスのサスペンションの大型セダン・ヴェアヴォルフを発表しています。
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図1 Cadillac, Cadillac Lyriq, 吉利汽車, 幾何汽車, 帝豪
図2 Buick, 江蘇奥新新能源汽車, ヤマハ発動機, Neorion, Exomotive, 紅旗1, Karma
図3 Koenigsegg, SSC, Chandler Motor Car 1, Vignale, Cord Corp., Dagger GT, Karlmann King, VL Automotive, Adamastor, Inferno, Werwolf (Optima)