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La source d'Ingres,  Paris  ©DeepStSky 

0377 Kanon - canon - canon - 正典・基準 I

2023/10/18 投稿

    ドイツ語の発音は

\ˈkaːnɔn\ で、長音の第一音節にアクセントがあります。フランス語では大砲が同音 \ka.nɔ̃\ 異義語で、これは独英語では Kanone - cannon となります。形容詞は普通に、kanonisch - canonical - canonique です。語源は古代ギリシア語の κανων で、この言葉自体もヘブライ語の葦の茎から来ています。一定の長さに切った葦の茎を長さの基準としていたのでしょう。これは、今は光速を基準としていますが、かっては1メートルの基準となっていた、パリのメートル原器のようなものだったのでしょう。キリスト教では、教派によって違いがありますが、正典または聖典となされる書物があり、教義の拠りどころとなっています。一般的に基本的とみなされる準則を表し、美術ではレオナルド・ダ・ヴィンチの円内に大の字と十字状に重なった男性の裸体画スケッチに見られるように、古来から人体の理想的比率が追及されていました。文芸の世界では、作品の良し悪しを判定する基準としてのシェークスピアの作品などがこれで、日本でなら『源氏物語』や『平家物語』がカノンとみなされるでしょう。小中学校などの場合は、一国民の教養の前提となる必読書と言うところです。また数学や物理学では、正準変数などと言うように基本や基準となると言う意味合いで「正準」と言っています。音楽では、パッヘルベルのカノン(追複曲)が有名です。

 類義語としては、リファレンスやベンチマークがあります。理想と言う言葉も似ていますが、これは観念的に目的的なもので、これを模範中の模範と言えば、現実的な形を取ることになるでしょう。

 Referenz - reference - référence  参照、参考、言及、照会先などとも訳されますが、音響機器やIT分野の場合、リファレンスと言われるものは、具体的に比較・評価の基準とされ、手本とすべき機器やCD、ソフトウェアやハードウェアのことです。

 最近ではよく、何かを評価する場合の比較基準をベンチマークと言いますが、これはIT用語では性能や動作速度の比較のリファレンス、金融部門では株価指数などの指標銘柄、経営学では比較の基準・指標・目標としての競合メーカーの業績データなどを指しています。元々は、標高や建築物の高さを測量する際の基準となる水準点(標石)を表す言葉でした。

 アニー・エルノーがノーベル文学賞を受賞しました。

        In ihrer Kritik an den Machtverhältnissen führt Ernaux die französische Öffentlichkeit zu wesentlichen, aber vergessenen Wurzeln zurück. Sie steht für die Kraft der Literatur und des persönlichen Schreibens in Frankreich. […] Ernaux vertraut der Praxis des Schreibens, der Bildung und den Mitteln der Aufklärung in einer Zeit, in der intellektuelle Arbeit, Kultur und Literatur oft genug als verzichtbares Elitenphänomen diskreditiert werden. Dabei geht es ihr natürlich nicht um eine affirmative Anbetung der Klassiker. Die kritische Praxis des Lesens, von der Ernaux begeistert kündet, empfiehlt die Dekonstruktion des literarischen Kanons im Licht unserer heutigen Empfindungen und Urteile: Bei Proust lässt sie keine Gnade walten. Nicht im politischen Umsturz, nicht in einer Privatisierung des Sozialstaats oder einem optimierten Management des Staates liegen die Schlüssel zur Reform der Gesellschaft, sondern in der Kultur – das ist die Reaktion Frankreichs auf Pandemie und Zeitenwende, auf die Krise der globalen Ordnung und der sozialen Sicherungssysteme. Armut, Streit und Gewalt sind Themen bei Ernaux – und wie man da wieder herausfindet, mit dem Füllerstich als Ariadnefaden, das zeigt sie in Person und Werk eben auch. (SZ, Nils Minkmar, 21.05.2022)
        エルノーは、権力関係に対する批判において、フランス人を本質的だが忘れ去られた根源に立ち戻らせる。エルノーは、フランスにおける文学および個人の文筆の力の表現なのである。【…】エルノーは、知的作業、文化、文学が、しばしばエリートの現象としてなくてもよいと悪しざまに取り扱われる時代に、書くことの実践、教養、啓蒙の手段に信頼を寄せている。もちろん、エルノーは古典を肯定的に崇拝することなどには関心がない。エルノーが熱心に宣言している読書の批評的実践は、私たちの現代の感覚と判断に照らして文学の正典を脱構築することを推奨しているのである――プルーストに対しても容赦はしない。社会改革への鍵は、政治的革命でもなく、福祉国家の民営化や国家運営の最適化でもなく、それは文化にある――これは、パンデミックと時代の転換、世界秩序と社会的保障制度の危機に対するフランスの反応である。貧困、争い、暴力がエルノー作品のテーマであり――そこからまたどのようにして抜け出すかを、万年筆の書き跡をアリアドネの糸として、本人自身およびまたその作品で示している。(『南ドイツ新聞』ニールス・ミンクマー)

 ボストン出身の写真家ナン・ゴールディンは生活の私的な場面を生々しく写したプライベート・ドキュメンタリーの旗手として世界的に名を馳せました。

        Die Fotografin Nan Goldin wurde mit intimen Bildern aus ihrem Alltag ein Weltstar der Kunst. […] Goldins Hauptwerk, die Diashow Ballade von der sexuellen Abhängigkeit, lief viele Jahre lang als Geheimtipp bei kleinen Szeneveranstaltungen […]. Heute gehört das Werk, das mehr als 800 fotos umfasst, zum Kanon der Gegenwartskunst. (SZ-Magazin, Thomas Bärnthaler, Nr. 19, 12.05.2023)
        写真家ナン・ゴールディンは、日常生活の親密な写真で芸術界の世界的スターとなった。【…】ゴールディンの主要作品であるスライドショー「性的依存のバラッド」は、小規模芸術イベントにおける耳寄り情報として何年も公開された。【…】現在では、800枚以上の写真で構成された、この作品は、現代芸術の正典に属するものとなっている。(『南ドイツ新聞マガジン』トーマス・ベルンターラー)

 最近ではオンラインやデジタルの読書が普及し、本棚を見て持ち主の性格や教養の程度を見ることも難しくなってきました。

        Seit dem Aufstieg des Bildungsbürgertums im 18. Jahrhundert ist der Blick ins Bücherregal und später in die Plattensammlung eine beliebte Abkürzung in den Wertekanon und die Persönlichkeit eines noch nicht so vertrauten Menschen. Der Schriftsteller Nick Hornby eskalierte das in seinem Roman "High Fidelity" zur Schicksalsfrage, ob man Menschen lieben kann, die Phil Collins hören. 320 Seiten war ihm die Antwort wert. (SZ, Andrian Kreye, 24.06.2023)
        18世紀のブルジョワ教養人階級の台頭以来、本棚や後にはレコードのコレクションに目を向けることは、まだあまりよく知らない人の基本的な価値観や個性を知るのに好まれた手っ取り早い手段であった。作家のニック・ホーンビーは、これを小説「ハイ・フィデリティ」で、フィル・コリンズを聴く人を愛することができるかどうかと言う運命の問いとしてエスカレートさせた。その答えを出すのに彼は320ページを費やしたのである。(『南ドイツ新聞』アンドリアン・クライエ)

 ジョン・マルコヴィッチは悪役が多い俳優ですが、本人は悪役は出演した作品のほんの一部に過ぎないと言っています。

        SZ     Sie waren zuletzt in „Der Musikkritiker“ zu sehen.
        Malkovich     Darin trage ich Verrisse vor, auf Beethoven, Brahms, Debussy … die wurden alle total zerstört. Heute sind sie Teil des Kanons der westlichen Musik. Schumann, einfach jeder! Also wen juckt’s, wenn man Kritik abbekommt? (SZ, Philipp Bobermann, Interview mit John Marlkovich, 25.03.2023)
        南ドイツ新聞   あなたは最近『音楽批評家』に出演されましたね。
        マルコヴィッチ  私の役はベートーヴェン、ブラームス、ドビュッシーなどなどを酷評することで、これらみんなの権威を完璧に失墜させました。今日では、これらの音楽家は西洋音楽の正統派に属します。シューマンにしても、単にみんなそうなのです!ですから、批判されても、誰も気になどしないのです。(『南ドイツ新聞』フィリップ・ボーヴァーマン、ジョン・マルコヴィッチのインタビュー)