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La source d'Ingres,  Paris  ©DeepStSky 

0360 Allegorie - allegory - allégorie - 寓喩 VII

2023/06/19 投稿

   パリの

レピュブリック広場には片手にオリーブの枝を掲げて、胸を覆ったマリアンヌが、そこから少し離れたナション広場には権威の象徴としてのファスケス(束桿)を持ち、片方の乳房を露わにしたマリアンヌが立っています。どちらのマリアンヌも革命の象徴であるフリジア帽を被っています。アメリカ合衆国の独立100年祭を記念して自由・平等・博愛をモットーとするフランスから贈られ、ニューヨークの海からの入口に立っているのが、自由の女神(Lady Liberty)です。これは、封建王政を倒し民主共和制を築いたフランス革命と同様に、植民地を苛酷に搾取するイギリス王国からの独立を達成したアメリカ革命の偶喩となりました。フランスのマリアンヌに匹敵するアメリカ合衆国のコロンビア(Columbia)、またローマ時代の、特に解放奴隷に崇められた自由の女神(Libertas)を表したもので、ドラクロワ描く胸を露わにした闘争的なマリアンヌとは違い、将来を灯す松明を掲げています。以後海外からの移民たちが上陸前に最初に目にした新天地アメリカにおける自由を寓意するものとなりました。またパリ・バスティーユ広場の1830年七月革命記念柱(Colonne de Juillet)の頂上には、これは珍しくも男性の、片手に松明、片手に専制政治からの解放を象徴した千切れた鎖を持った、先に見た自由の守護霊(Le Génie de la Liberté)の像が聳えています。1789年のフランス革命の発端となったバスティーユ監獄襲撃の後、要塞が破壊され、広場となったところにナポレオンが巨大な象を模した建物を計画していましたが、ウオータールーの敗北で実現されませんでした。後にヴィクトル・ユーゴーの『ああ無情』にも見られる、その建物の実物大の石膏模型が何十年間もの間このバスティーユ広場に建っていました。

 

 

 

 

 

 

 

図1 マリアンヌ(パリ、共和国広場) マリアンヌ(パリ、国民広場) 米国の自由の女神像 自由の守護霊(パリ、バスティーユ広場)*1

 

 マリアンヌはフランス共和国を代表する寓喩ですが、欧州では他にもドイツのゲルマニア、バイエルン王国のバヴァリア、プロイセン王国のボルッシア、大英帝国のブリタニアなど数多くの女神が考案されています。

 

 

 

 

 

 

  

図2 ゲルマニア(パウロ教会国民議会) 目覚めたゲルマニア ブリタニア*2

 

 ゲルマニアはすでにローマ時代からガリア以北の居住民の象徴で、ローマ帝政時代には表面には皇帝、裏面には折れた槍を配したゲルマニアが刻印された貨幣があります。1848年のドイツ革命の頃には自由の象徴として黒赤金の共和制ドイツ国旗と共に描かれたりしています。これが革命が挫折して、プロシア王国がドイツ帝国を宣言した1871年以後は黒白赤の帝国旗に代えられ、以後は軍国主義や反動の寓喩となりました。

 大英帝国(グレイト・ブリテン)の寓喩としてのブリタニカは、七つの海を支配する海神ポセイドンの象徴・三叉槍、帝国旗ユニオンジャックをそのアトリビュートとしていますが、これにライオンが加わることもあります。

 

 

 

 

 

 

図3 ゼウスによるエウローペーの略奪*3 大淫婦バビロン*4

 

 欧州(ヨーロッパ)の名の語源となったのは、フェニキア(現在のレバノン)の可憐な王女エウローペー(Εὐρώπη, Eurōpē)で、天空神ゼウスが牡牛に化けて誘拐したエウローペーは、欧州連合の寓喩とされています。ある時水浴しているエウローペーに一目惚れしたゼウスが妻のヘーラーが嫉妬するのを恐れて、息子のアポロンに命じて自身を白い牡牛に変えさせ、この牛を見つけたエウローペーが背に跨ると、海を渡ってクレタ島まで逃れました。そこでゼウスは本来の姿を現し、エウローペーとの間に三人の子を儲けたと言うことになっています。

 初期キリスト教では、ヨハネ黙示録で汚れた霊の巣窟で悪徳の栄える都をバビロンと言う名の手に金杯を持つ大淫婦としていますが、これは迫害者のローマ帝国やキリスト教の敵対者の寓喩となっています。これが後にルターから始まった宗教改革ではローマのカトリック教会がバビロンであり、ローマ教皇がアンチ・クリストであると置き換えられました。

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        *1    左から マリアンヌマリアンヌ、米国自由の女神 - Freiheitsstatue - statue of liberty, Liberty Enlightning the World - statue de la liberté, 自由の守護霊
        *2    左 Germania, Philipp Veit (1948) フランクフルトのパウロ教会で開かれたドイツ国民議会の議場に掲げられたもの。 中 Erwachende Germania, Christian Köler (1849) 右 ブリタニア 
        *3    Raub der Europa
        *4    Hure Babylon