続けて星の光のエンブレムを見てゆきましょう。
なおここではイニシャルやレタリング入りのエンブレムも考慮しました。
1 図形(簡素なデザイン) 1.2
図1 江淮(JAC)1 大運 紅星 カンタンカ 北極星 クライスラー 2000-2009 ダッジ 1982-1992 オートスター ミリテム ヘンシェル ハノマーク・ヘンシェル コタン・エ・デグテ 力之星 デューラント・スター G・パットン 米陸軍 アステ1 アポロ1(独) ブロッセル メタリュルジック1、2 ローミ アルトカム
電気自動車(EV)のSUV(多目的スポーツ車)を発表した安徽省の江淮(Jianghuai = JAC)汽車の従来からのエンブレムはメルセデスの星とよく似た五芒星ですが、そのP241の外観はメルセデス・ベンツのGLCのコピーで、JACの星もそこから来たのかも知れません。四川省成都の大運(Dayun)汽車は、円内に運があり、星を大と見るのでしょう。EVなども手掛けている河北省の紅星(Hongxing)汽車、円に星のガーナのオフロード車メーカーで創業者名を冠したカンタンカなども、それぞれ星の輝きを企業の方針を象徴するものとしています。北朝鮮の彗星(Hyesong, ヘソン)貿易会社は北極星(Pukkuksong, プッククソン)ブランドのトラックを発表していますが、中国製品のコピーでしょう。ステランティス(Stellantis プジョー・シトロエンPSA+フィアット・クライスラーFCA)傘下のクライスラーは米国自動車メーカーのビッグ・スリーの一つですが、その五芒星ペンタスターは1962年から1993年まで国外で、また2000年から2009年まで国内で使われていました。世界市場制覇に当たっての認識されやすさと言う観点から選ばれたと言うことです。同じくステランティス傘下の米ダッジも1982年から1992年までクライスラーのペンタスターを使っていましたが、青色を赤に変えています。仏オートスターはキャンピングカーを生産しています。伊ミリテムはアメリカ車などの改装をしています。独カッセル市のヘンシェル(元ヘンシェル&ゾーン)社は既に19世紀初めから蒸気機関車を生産していましたが、後にはトラックやバス、第二次世界大戦中は戦車や戦闘機も生産していました。このヘンシェルとハノーファー市のハノマークが戦後に合併したハノマーク=ヘンシェルは、後にダイムラー=ベンツに吸収されてブランドもメルセデス・ベンツとなりました。仏コタン・エ・デグテは20世紀半ばからリヨンで乗用車や商用車を生産していましたが、1930年前後の大恐慌で消滅しました。河南省の力之星(Zip Star)摩托車は、オート三輪や三輪EVも出しています。1920年代にGMを追い出されたデューラントが創設した同名の企業は、スターなどのブランドに人気があったにも係わらず、10年も待たずに消滅しました。後に見るサイのエンブレムのUS特殊車両(USSV=US Specialty Vehicles)はアジア市場向けにノルマンジー上陸作戦Dデイの指揮を執ったジョージ・パットン将軍の名を冠したG・パットン・ブランドでフォードのピックアップに架装を加え、装甲車並みの外観のSUVを生産していますが、米陸軍の星のエンブレムです。米陸軍が試作しているFED(Fuel Efficient Ground Vehicle Demonstrator)も星のマークです。オートバイから始めた仏アステは数多くのメーカーに自動車エンジンを提供し、1900年から1910年まで自社でも小型乗用車を出していました。独アポルダ市のアポロは、1904年から1927年まで比較的廉価な乗用車やレーシングカーを生産し、1932年までNSUを販売していました。ベルギーのブロッセル兄弟社は、1912年からバスやトラックを生産し、後に親会社となった英レイランドの倒産と共に消滅しました。同じくベルギーのメタリュルジックは機関車メーカーの1903年に造られた自動車部門で、1907年に独立し、1927年にインぺリアに買収されるまで高級車を生産していました。ブラジルの創業者(Romo)名を冠した工作機械メーカーのローミは第二次世界大戦後トラクターの生産を始め、1956年から1961年までイタリアのマイクロカー・イソをローミ・イソとして生産していました。後に見る馬のエンブレムの露カマースは、アルトカム・ブランドのオフロード車やトラックも生産していました。
図2 北汽制造1 雲雀(現) 麗馳 神馬・波導1・神州1 中国航天 オルトシト ARTAメカニクス ドイツ=ファール 晶馬 北奔 新長征 金海科 飛宝 昆明 野馬新能源
最初に見たメルセデスとよく似たエンブレムは国営の北汽集団(Beijing Automotive Industry Holding Co.,BAIC)の中核メーカーでSUVやオフロード車の勇士・騎士・戦旗、軽EVの大猫や子猫、商用車や軍用車などを生産している北京汽車制造厰(Beijin Automobile Works, BAW)のエンブレムですが、さらに子会社の北汽黒豹(Heibao)汽車、北汽雲南の瑞麗(Ruili)汽車などでも使われています。これを少し変形してどちらかと言うと矢尻、または後に見るシトロエンの山形歯車のようになったのが、EVや水素燃料電池の開発をしている、スバルと貴州・航天(Hangtian)との合弁(JV)雲雀(Yunque, Lark)汽車の現行エンブレムですが、これは一般の航天のロケットのエンブレムに似せたものでしょう。またこれらに酷似しているのが、隆鑫(Loncin)集団傘下となった、低速EVを出している山東省の麗馳(Lichi)電動汽車やバスメーカーの浙江・神馬(Shenma)客車、さらに元は携帯メーカー浙江省宁波市・波導(Bodao)汽車、家電大手の美的集団傘下の雲南航天・神州(Shenzhou)汽車のエンブレムですが、さらには北京の中国航天(CASC = China Aerospace Science & Technology Corporation)は矢尻のようなロケットの頭のようなデザインです。1980年代にシトロエンがルーマニアのオルテニア(小ワラキア)地方でルーマニア工業連盟とのJVオルトシトを立ち上げ、フランスへはシトロエン・アクセルとして逆輸入しましたが、低品質で失敗しています。シトロエンが撤退した後、社名を工場のある市の名を取ってクラヨーヴァ(Craiova)に変更し、大宇と提携してローデイ(ルーマニア大宇)、さらに大宇ルーマニアとなりましたが、大宇を吸収したGMが、フォードに売却しました。エンブレムはシトロエンのダブルヘリカルギアを変形したものです。F1ドライバーの鈴木亜久里のレーシングチームARTAによるカスタマイズ・ブランドのARTAメカニクスのエンブレムもこれらに似ています。伊SDF(SAME Deutz-Fahr)グループ傘下の独ドイツ=ファールはトラクター・メーカーです。江西・江鈴汽車集団のバスメーカー晶馬(Jingma)汽車もよく似ていますが、どのような神経で同じようなエンブレムにするのか、いささか不可解なところです。ダイムラーの内蒙古包頭・北方(BAIBEN)工業とのJV・北奔重汽(Baiben Truck)のエンブレムは、親会社へのオマージュの意味も込めた三芒星を思わせるものです。上に見た中国航天の子会社・専用特殊車やEVの航天・新長征(藍速 Lansel)電動汽車は、親会社の図案を逆さにしています。遊覧車など低速EVの金海科(Jinhaike)電動汽車(山東海科車業科技)やスマートをコピーしていた済南飛宝精機(Flybo)も星か勝利のⅤでしょう。バスメーカーの雲南・昆明(Kunming)客車はメルセデスの星を逆にしています。EVの野馬新能源(Yema NEV)も似た図案です。
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図1 安徽江淮汽車1, 河北紅星汽車, Kantanka, 北極星, Chrysler 2000, Dodge 1982, Autostar, Militem, Henschel,Hanomag-Henschel, Cottin & Desgouttes, 力之星摩托車¸ Durant 1¸ General Patton, US Army, Ateliers de Construction Mécanique l’Aster 1, Apollo-Werke 1, Brossel Frère, Métallurgique1, Métallurgique 2, Romi-Isetta, Altkam
図2 北京汽車制造厰1, 雲雀汽車1, 麗馳電動汽車, 神馬・波導汽車1, 中国航天, Oltcit, ARTAメカニクス, Deutz-Fahr, 江西江鈴集団晶馬汽車, 北奔重型汽車, 航天新長征電動汽車, 済南飛宝精機, 山東金海科電動汽車, 昆明客車製造, 野馬新能源