ドイツ連邦共和国の Hoheitszeichen(国章)は、
連邦旗を飾る、いわゆる Bundesadler (連邦鷲)です。これはローマ帝国のエンブレムであった鷲が、フランク王国のカール大帝によりドイツに引き継がれることになったものです。
Das traditionsreichste deutsche Staatssymbol ist der Adler. Seine Ursprünge lassen sich bis in die Anfänge des Heiligen Römischen Reiches verfolgen. Er zierte das Wappen des Königs, und fast alle Reichsfürsten führten den Adler in ihrem Schild, um so ihre Stellung als Lehnsleute des Königs anzuzeigen. Das Wappen des Kaisers war im Unterschied zum einköpfigen Königsadler der Doppeladler. (Deutscher Bundestag)
ドイツの国の最も由緒あるシンボルは、鷲です。その起源は、神聖ローマ帝国の建国期にまで遡(さかのぼ)ることができます。鷲は王の紋章を飾り、またほぼ全ての諸公も鷲をその盾型徽章に模って、これで王の封建臣下であることを示しています。皇帝の紋章は、王権を象徴する単頭の鷲とは違う双頭の鷲です。(連邦衆議院)
ロミー・シュナイダー主演の『プリンセス・シシー』など欧州の時代物の映画でご覧になったことがあるかも知れませんが、代々神聖ローマ帝国の皇帝を輩出していたハプスブルグ家は双頭の鷲のワッペンです。また東ローマ帝国からロシア帝国に引き継がれた双頭の鷲は、今またロシア連邦で使われています。現代ドイツの単頭の鷲は、少しずつ意匠を変えて大統領や政府を始めとする、様々な国家機関で使われています。上記の Königsadler と言われている鷲は実際には存在せず、日本で言うイヌワシ(Steinadler, Aquila chrysaetos, Golden eagle)のことで、世界中にいるようです。ドイツ連邦軍のエンブレムはプロシア軍から受け継いだ鉄十字(Eisernes Kreuz)です。
次にドイツの大学ですが、ここでは筆者が学んだり、教えたりしたことのある大学の校章だけを掲げておきました。
図5 校章 ゲッティンゲン マールブルク ベルリン自由 ライプツィヒ テュービンゲン 実現しなかったマールブルク大学校章案
最初のエンブレムは創立者名を冠したゲオルグ・アウグスト大学・ゲッティンゲンのイニシャルを取ったものです。これは5番目に見る大学名に創立者のパーソナル・デヴァイスであるヤシを配したテュービンゲン大学と同じように、横に大学名を付けて文字商標と図形商標(Wortmarke und Bildmarke)を一体化した、社会のグローバル化に合わせたモダンなロゴとなっています。これに対して依然として多くの大学では旧来からの大学の公印(Siegel)を校章としています。2番目のマールブルク大学では2002年に6番目の図案に切り替えようとしましたが、何の象徴かよく分からないため、学内外からの猛反対に遭い、校章刷新計画は頓挫してしまいました。3番目のベルリン自由大学は、第二次世界大戦後べリリンが分割され、ベルリン大学(現フンボルト大学)が東側占領区域に入り、学問の自由が制限され出したため、設立されたもので、東に当てつけて自由を名称に冠したものです。ベルリンの市章である熊と図4にあるハーバード大学のエンブレムを模したものとなっています。
団体や企業がその目的を象徴したり、また単にイメージをアピールするために様々な社章や団体章が考案されています。これは団体構成員や社内に向けてのコーポレート・アイデンティティの涵養ともなります。
図5 社章・団体章 ルフトハンザ 森永製菓 クロネコヤマト DFB(ドイツ・サッカー連盟)