この法律用語は、かって森村誠一が
その初期のヒット作『高層の死角』で採り上げて以来、人口に膾炙することとなりました。未必的故意とも言います。独 Eventual- oder bedingter Vorsatz 英conscious neglect, wilful negligence, conditional intent, contingent intent 仏dol éventuel, éventuelle intention 。法律用語ですから各国語ともラテン語 dolus eventualis が本来の専門用語です。
その意味するところは、
犯罪事実の発生を積極的に意図あるいは希望したわけではないが,その可能性を認識し、しかもその結果が発生してもかまわないとする認容。故意の一種であり不確定故意の一つ。(百科事典マイペディア)
と言うところにあります。ドイツ語での定義的な説明を見てみましょう。
Der Begriff des Eventualvorsatzes ist notwendig, weil grundsätzlich nur vorsätzliche, also gewollte, Handlungen strafbar sein können. Fahrlässigkeit ist in vielen Rechtsordnungen nur bei Tatbeständen strafbar, für die dies ausdrücklich im Strafrecht festgehalten ist (in Deutschland ist dieser Grundsatz in § 15 StGB festgehalten). Oft trifft man aber auf die Konstellation, dass ein Täter den Erfolg eigentlich gar nicht will, ihn aber als – möglicherweise sogar unerwünschte – Nebenwirkung seiner Handlung in Kauf nimmt. Dieses Inkaufnehmen der Verwirklichung des tatbestandlichen Erfolges wird Eventualvorsatz genannt. Allgemein herrscht Einigkeit, dass für die Strafbarkeit einer Tat Eventualvorsatz genügt. (WPd)
処罰の対象となるのは、原則的には故意、すなわち意図した行為のみであるため、ここに未必の故意の概念が必要とされる。過失という概念は、多くの法制度においては明確に刑法において定められた要件にのみ適用されるものである(この原則はドイツでは刑法第15条に規定)。しかししばしば行為者が本来は結果の発生を欲しているわけではないが――それどころか発生しないことを願っている場合もあるが――、容認しているというような布置に出会う。この要件的結果の発生の容認が未必の故意である。ある行為を処罰するに際しては、一般的には未必の故意で十分であるとの一致に達している。(ウィキペディア独)
例えば殺人の場合、相手を殺そうとする明確な意図、すなわち殺意をもっていた場合は故意、詳しく言うと確定的故意の殺人であり、そんなつもりは全くなかったのに、思わずかっとなって、料理のためにたまたま手に持っていた包丁で刺し殺してしまったような場合は過失( Fahrlässigkeit )による過失致死( fahrlässige Tötung )、また何度も殴ったり蹴ったりして相手を殺してしまった場合は傷害致死( Körperverletzung mit Todesfolge )となります。ただし前者の場合、また認識ある過失( bewusste Fahrlässigkeit )か、認識のない過失かは、意見の分かれるところとはなりますが。問題となるのは中間的な場合で、ある結果を特に意図したわけではないが、それが起こる可能性を認識しており、かつこれを容認した場合が、未必の故意です。未必の故意は不確定的故意の一種で、これには他に概括的と択一的不確定的故意もあります。両者ともに結果は確定的であるが、その個数や客体またはどの客体が対象となるのかが不確定と言うような場合となります。これらとは違って、そもそも結果が生起するかどうかが不確定的な場合が未必の故意で、問題となるのは上記の殺人以外にも被害が出るかも知れないと思いながらも該当する製品の操業や販売を止めなかった場合、また暴走族のように高スピードで赤信号を無視して人身事故を起こしたような場合があります。後者の交通事故の場合は通例過失致死罪などに問われていますが、最近ベルリンで異例の未必の故意による殺人罪が宣告されました。
Lebenslange Freiheitsstrafen verhängt das Berliner Landgericht am Montag. Lebenslang solle den beiden als Ku'damm-Raser bekannt gewordenen Männern, 28 und 25 Jahre alt, der Führerschein entzogen werden. Die Verteidigung kündigte Revision an. / "Es ist immer eine Einzelfallenscheidung", beginnt Richter Ralph Ehestädt. Persönlichkeit der Täter, Motivation, Tatumstände. Die Gesamtschau führe zum Urteil. / Die Angeklagten hätten einen tödlichen Ausgang des Rennens natürlich nicht gewollt. "Aber wir reden hier von einem bedingten Vorsatz." Davon, dass sie die Folgen "billigend in Kauf" genommen hätten. Mit bis zu 170 Stundenkilometer seien die Angeklagten gerast - "nicht auf einer Landstraße, sondern auf dem Kurfürstendamm, einer Hauptverkehrsstraße in der City". / Das Tempo spielt die besondere Rolle bei der Entscheidung. Es habe die beiden Sportwagen zu Tatwaffen, zu "gemeingefährlichen Mitteln" werden lassen, so das Gericht. "Es wurde mit Vollgas gefahren", sagt Ehestädt. Ob jemand von rechts kommt, sei nicht mehr einsehbar gewesen für die Raser. "Keine Chance für die Raser zu handeln." Und keine Chance für das Opfer. / Ein Unfallort, den Zeugen später als Schlachtfeld beschreiben. Bei Grün rollt ein kleiner Jeep am 1. Februar 2016 gegen 0.40 Uhr an der Tauentzienstraße auf die Kreuzung. Die beiden PS-starken Sportwagen – beide Fahrer sind bereits mehrfach wegen Delikten im Straßenverkehr aufgefallen – nähern sich rasend. / Mit mindestens Tempo 160 rammt der 28-Jährige den Jeep. 72 Meter weit wird der pinkfarbene Geländewagen geschleudert. Der 69 Jahre alte Fahrer stirbt in seinem Auto. / Ein Richterspruch, der bundesweit für Aufsehen sorgt. Bislang führten tödliche Verkehrsunfälle nach Raserei zu Schuldsprüchen wegen einer fahrlässig begangenen Tat. Die Debatte um härtere Strafen für illegale Rennen läuft. Eine Gesetzesinitiative liegt vor. (dpa, 27.02.2017)
この月曜日ベルリン地裁で終身刑が言い渡された。28 歳と 25 歳のクーダム暴走族として有名となった男二人は、生涯に及び自動車免許が取り消され、欠格とされる。弁護側は判決を不服として控訴する意向を明らかにした。「判決は、常に個別の事件それぞれに対する判断となります」とラルフ・エーシュテット裁判長が判決文を読み上げる。被告人の人格、動機、犯行の状況などを鑑みた全般的観点から判決が出されることになる。カーレースで死者が出ることなど勿論両被告人が意図したわけではない。「しかしこの場合、問題となるのは未必の故意」、すなわち二人が結果を「そういうことになったとしても仕方ない」と容認したところにある。二人は最高時速 170 キロで、「県道などではなく、ベルリン市内の目抜き通りであるクアフュルステンダム(選帝侯通り=クーダム)」でレースをしている。ここで速度は判決を決める大きな要因となった。この速度によりレースに参加したスポーツカー 2 台が公共の安寧を害する手段、犯行の凶器にされたと裁判長が続ける。「全力疾走をして」、他の車が走行路に進入して来るかどうかなど全く見分けがつかなくなっていたと裁判長は続ける。「はっきりと認知できたとしても被告には何らなす術もなかったであろう」し、また被害者にも逃れる機会など全くなかったであろう。事故現場は、目撃者によると、あたかも戦場であるかのような観を呈していた。2016 年 2 月 1 日 0 時 40 分頃、青信号に切り換わったタウエンツィエン通りからクーダムに小型のジープが進入した。超高性能の両スポーツカー(運転していた被告両人ともすでに何度も道路交通法違反で処罰されている)が、クーダムを全速力で疾走してきた。最低でも時速 160 キロで 28 歳の被告の運転するスポーツカーがジープの側面に激突した。ピンク色のジープはその衝撃で 72 メートル打っ飛ばされ、運転していた 69 歳の男性は車中で即死であった。この判決はドイツではトップニュースとなった。暴走族による事故は、従来の判例では、過失としてのみ罰せられていたからである。非合法カーレースの罰則を強化しなくてはという議論はすでになされており、法案も準備されている。(ドイツ通信)
まさに従来の判例を覆す画期的な判決ですが、控訴審を切り抜けられるかどうかは不透明なところです。
(続く)