法螺吹きトランプの大統領就任式の翌日に
「女性の行進」と名付けられたデモが、アメリカ各地でありました。シカゴやボストンで25万人、ニューヨークやロスアンジェルスで20万から50万人、また首都のワシントンでは官庁発表でも50万人を超え、あのマルティン・ルーサー・キング牧師の有名な「私には夢がある」演説があった公民権運動の集会を遥かに上回り、1969年11月の「ベトナム反戦デモ」(60万人以上)に匹敵する規模になったと報じられています。アメリカ全土で290万人という、一日のデモ参加者数としてはおそらく米国史上最大のデモとなりました。(Cf. Easley, Jason. "Women's March Is The Biggest Protest In US History As An Estimated 2.9 Million March". Politucus usa. Retrieved January 25, 2017 )
sea of pink
We did it! We created a sea of pink! (www.pussyhatproject.com: Image found on Twitter: @rmayersinger)
Pink-hatted crowd in Washington
Washington, D.C. Foto: Reuters - Shannon Stapleton Pussy hat, Berlin
Berlin Foto: Yahoo.com
Tiny hands can't hold back progress
Washington, D.C.: Foto: Bryan Woolston / REUTERS
Tiny hands off our rights
Foto: Anthony Kwan/Getty Images
次の写真はプスィーハットではありませんが、大統領選挙投票前のフェミニストたちのシカゴでの抗議集会です。
Hands off my cuntry Feminist protest at Chicago on the Oct/20 2016. Foto: Japan Times
これらのデモで目についたスローガンの中、本稿に関連するものを幾らか挙げておきますと、
Tiny hands can’t hold back progress! ちっぽけな手で進歩を止めることなどできないぞ!
Keep your tiny hands off our rights! ちっぽけな手で私らの権利に手を出すな!
Pussy grabs back! 子猫ちゃんに掴み返されるぞ!
This pussy has teeth! 子猫ちゃんには歯があるのよ!
これらは元々次のフレーズのバリエーションです。
Keep your tiny hands off my pussy! 私の子猫ちゃんにちっぽけな手を出すな!
と言うことで大々的にキャンペーン用のバッジまでできています。
Keep your tiny hands off my pussy
Keep your tiny hands off my right
さらなるバリエーションとして「私の子猫ちゃんは吊革じゃない」と言うのもありました。この「子猫ちゃん」と言うのは、日本語では「(お)まんこ、おめこ」などいまだ大っぴらには聞けない言葉ですが、1968年代のセックス革命を経た欧米ではそれほどの違和感もなく日常語化してきています(独 Muschi, Möse 仏 chatte )。
上記のスローガンを理解するには、そこにある2つの仄めかしが分かる必要があります。第一にトランプが女性の股に手を差し入れるのが趣味ということが暴露されたことで、ビデオの隠し撮りでは、そんなことをしてもこちらが金持ちだったら女なんかは何とでもできると豪語していたことです。第二にトランプがその手の小さいことを非常に気にしているということですが、これは前稿で述べました。これら破廉恥事や児戯に等しいレベルに関する反トランプ・スローガンの中にはかなり強烈なものもあり、言語表現で大人しい日本人にはドイツ語でいわゆる Fremdschämen(他人ごとながら恥ずかしくなる 英 "cringe factor" )的な、穴でもあったら入りたい気持ちにさせるようなものもあるでしょうが、当事者たるアメリカ女性にとって他人ごとでないのは当然のことです(実際のことグローバル化の進んだ今日この頃、旧態依然とガラパゴス的に他人ごとなどとのんきなことを言っておられる場合でもないでしょう)。もっと強烈なのには、
Hand off my cuntry! 私のまんこ/おめこに手を出すな
Fuck rape culture! 強姦文化なんか糞喰らえ!
などもあります。Cuntry と言うのは country (国)と cunt ☠(まんこ/おめこ)に掛けた造語です。一面にピンクの帽子を被ったプスィーハット・デモは、女性に対して差別発言を止めないトランプへの抵抗運動として数人の女性が提案してインターネット上に拡散されたものです。
On the night of January 7, in the back section of Fremont's Red Door pub, about 30 women crowded in and set to work crafting pussy hats—pink beanies with pointed cat ears that are intended to be worn by protesters at the upcoming Women's March in Washington, DC. / The march is set for January 21, Donald Trump's first day in office. The plan is for women—as well as transgender, gender-nonconforming, and feminist people—to flood the National Mall in a unified display of opposition to Trump's misogyny and normalization of rape culture. (The Stranger, Ana Sofia Knauf, Jan/10/2017)
1月7日の夜、フリーモンツ・レッド・ドア・パブの奥の方の席に30人ほどの女性が集まり、プスィーハットを編むのに余念がありませんでした。プスィーハットとは、ピンク色の編み上げ帽子で、左右に小さな猫耳がついていますが、首都のワシントンで計画されている「女性の行進」で一斉に被ることになっています。このデモ行進は1月21日のドナルド・トランプのホワイトハウスにおける最初の執務日に行われます。女性だけではなく、トランスジェンダー、性別不明、フェミニズムの人々なども加えて計画され、トランプの女性蔑視や強姦文化の平常化に抗してワシントンのナショナル・モールを抵抗のピンク一色で埋めるものとなります。(『ストレンジャー』誌(シアトル)、アンナ・ソフィア・クナウフ)
我が家の奥方も早々に一つ入手していました。
Pink Pussy Hat
Foto DeepStSky
女性蔑視では最先端を行くトランプもさすがに大っぴらにはそのような発言は控えているようですが、大西洋を越えた欧州にもその同類は多くいて、中でも低能な輩(大体極右)は堂々と演説さえしています。
Straßburg – Der polnische Abgeordnete Janusz Korwin-Mikke ist mit der schwersten Strafe in der Geschichte des Europäischen Parlaments belegt worden. Wegen frauenfeindlicher Äußerungen in einer Rede strich ihm Parlamentspräsident Antonio Tajani 30 Tagegelder. Für zehn Tage schloss er den fraktionslosen Abgeordneten von allen Aktivitäten mit Ausnahme von Abstimmungen aus. Ein Jahr lang darf Korwin-Mikke das Parlament nicht nach außen vertreten. Korwin-Mikke hatte die schlechtere Bezahlung von Frauen damit gerechtfertigt, dass sie schwächer und weniger intelligent seien. In sozialen Netzwerken löste er damit europaweit einen Proteststurm aus. (SZ, DBR, 15.03.2017)
ストラスブール――ポーランド選出ヤヌス・コルウィン=ミッケ議員に対して欧州議会史上で最も重い罰則が科せられることになった。同議員演説における女性蔑視的発言に対してアントニオ・タヤーニ議長は同議員の30日分の費用弁償停止を命じた。無会派の同議員は、さらに10日間に渡って投票行動以外のあらゆる議員としての活動も禁止される。また外部に対して欧州議会を代表する資格も1年間停止された。これは同議員が女性の給与が男性よりも低いことを、女性は弱い性であり、また知能も劣っているから当然であると論じたことによる。欧州全域のSNSは、同議員演説に対する反対の大嵐に見舞われることとなった。(『南ドイツ新聞』DBR)