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La source d'Ingres,  Paris  ©DeepStSky 

0063 alternativer Fakt - alternative fact - 代わりとなる事実

2017/01/30 投稿

 代替的事実、選択的事実、

第2の事実、もう一つの事実などと訳してもいいでしょうが、その意味するところは真っ赤な嘘、虚偽、でたらめ、口からのでまかせです。

 本稿でもすでにポスト事実醜聞材など法螺吹きトランプに関する新語を解説していますが、今度はトランプ陣営内からこんなとんでもない造語が飛び出しました。代わりの事実と訳したのは、トランプ陣営内ではメディアが嘘をついているというのが基本姿勢となっていますから、それに代わる選択肢ということで、こちらが真実だと主張しているのです。こんなことを言い出したのは、トランプの選挙参謀で今では大統領顧問となったケリーアン・コーンウェイ( Kellyanne Conway )です。ことの発端は1月20日の大統領就任式の人出です。目でたく大統領に就任することになったトランプですが、就任式の観客数が以前のオバマ大統領の時に比べると圧倒的に少なかったのが、どうにも耐えられなかったようで、報道官に圧倒的に多かったと言わせました。次の日の新聞に比較した写真を載せられて、普通の人ならば穴があったら入りたいところでしょうが、批判に対しては一貫して拒否反応を起こすトランプの場合はどっこい怒りで煮えたぎって、どうすればメディアや情報提供者に復讐できるか考えを凝らしていることでしょう(式典の行われた敷地は国立公園局の管轄で、多くの写真もここから出ていますが、トランプは早々に緘口令を敷いています)。

InaugurationInauguration 就任式観客数 左トランプ(2017)右オバマ(2009) The Telegraph, David Millward, 20 JAN. 2017: National Mall crowds attending the inauguration ceremonies to swear in U.S. President Donald Trump at 12:01pm (L) on January 20, 2017 and President Barack Obama on January 20, 2009, © LUCAS JACKSON (L), STELIOS VARIAS/REUTERS

 御覧のように当日の正午一分過ぎの写真では、どちらが多いかは明白です。就任演説の開始には20~30分の相違があったようですが、最多観客数を見る上では大体同時刻の写真とみていいでしょうし、ワシントン首都圏交通局からの同日の地下鉄利用者に関する報告なども上記写真の印象を裏付けるものとなっています。これに対してその日午後の最初のホワイトハウス記者会見でショーン・スパイサー報道官が全く逆のことを述べたので、詰めかけた記者たちはみな唖然として開いた口が塞がらなかったようです。こんなことは何とも些細なことですから失言として放っておけばいいのに、露骨な嘘を正当化しようとするところからさらに問題がこじれて恥をかくことになるのですが、トランプやその腹心たちはこの辺のところが今一よく分かっていないようです。

        Speaking to Chuck Todd on on NBC’s “Meet the Press”, Mr Trump’s senior aide, Kellyanne Conway, was asked to explain why Mr Spicer "uttered a falsehood" about Mr Trump having the "largest crowd in Inauguration history". / "Don’t be so overly dramatic about it, Chuck. You’re saying it’s a falsehood [...] Sean Spicer, our press secretary, gave alternative facts to that," she responded. / "Alternative facts are not facts. They are falsehoods," said Mr Todd. / She insisted that there was "no way to qualify the crowd size" - an estimated 800,000 people attended Mr Trump’s ceremony, significantly less than President Obama’s ceremonies in 2009 and in 2013 - and she then berated Mr Todd for laughing. / Ms Conway zeroed in on Mr Todd’s use of the word "ridiculous" to describe Mr Spicer’s focus on crowd size at his first press briefing. (Independent, Rachael Revesz, 22 Jan. 2017)
        トランプ氏の腹心ケリーアン・コーンウェイはNBCの番組「記者会見」に出演して司会者チャック・トッドからなぜスパイサー報道官が「トランプ氏が歴代の就任式で最多の観衆を集めた」などという「嘘をついた」のかということの説明を求められた。それに答えてコーンウェイ大統領顧問は「そんなにドラマチックに誇張することはないでしょう、チャック。あなたは嘘と言うけれど、私たちの報道官のショーン・スパイサーさんは代わりとなる事実を述べただけです。」これに対してトッド司会者は「代わりとなる事実と言うのは、事実ではないでしょう。虚偽でしょう。」と応じた。コーンウェイ顧問は「観衆の多さを計ることなどできません」と自己の見解に固執し――トランプ氏の就任式には推計80万人が参加したが、これはオバマ大統領の2009年と2013年の観衆の数に比べて有意に少ない数値である――、その上でトッド司会者が苦笑したことに矛先を転じた。コーンウェイ顧問はトッド司会者がスパイサー報道官の最初の記者会見における観衆数への言及を「笑止千万」と言った、その言葉尻を捕えて詰(なじ)った。(『インディペンデント』誌、レーチェル・レべス)

 当の報道官は、二回目の記者会見でちゃっかりと「代わりとなる事実」を宣言しています。

        "I believe we have to be honest with the American people," Spicer said at a White House news conference, two days after being criticized for claiming that certain media outlets had misreported the size of the crowd to witness Trump's inauguration. / "I think sometimes we can disagree with the facts," Spicer said. "Our intention is never to lie to you." (CNBC, Dan Mangan, 23 Jan 2017)
        「我々は米国民に対して正直でなくてはならないと思う」とスパイサー報道官は、一定のメディアがトランプの大統領就任式の観衆の数を誤報していると難癖をつけたことを批判された2日後のホワイトハウス記者会見で述べた。スパイサー報道官は、「時には事実に賛同できないこともある」と続け、「我々はあなた方に対して絶対に嘘をつかないようにと思っている」とも発言した。(CNBC、ダン・マンガン)

 語るに落ちたとは、こんなことを言うのでしょう。メディアの伝える「事実に賛同できない」から「代わりとなる事実」を提出したが、それは国民には真実を伝えたかったからだと言うのですから。国民はトランプたちが言うことを真実だと信じればよいと言うことになります。これに続けて自分が出した就任式の数はテレビの視聴者や世界の視聴者も入れたものだったとまだ言い逃れをしようとしています。その後でも、メディアはトランプについてもっと良く報道するべきだとメディア批判もしています。欧米の報道関係者は、日本の記者クラブの怠けものたちのように大本営発表をそのまま鵜呑みにしてはくれませんから、法螺吹きトランプの天敵のようなものです。

 トランプは、また総得票数ではヒラリー・クリントンに300万票近くも差をつけられたことも悔しくて、そうなったのは300~500万の移民が非合法に投票したからで、調べ直すと言っています。総得票数でも自分が勝っていたと思いたいのですから、まるで負けず嫌いの駄々っ子です。筆者は常にトランプは精神年齢10歳くらいだろうと思っていました。この仮説についてはまた別稿で証明したいと思いますが、知識の点に関してもそのくらいのようで、ベルギーがどこかの都市だと思っていたり、パリがドイツの街だと思っているそうです。小学校の4年生や5年生なら世界のことをあまり知らなくてもまだまだ先がありますが、70歳でこんなに無知蒙昧なのではもうお先真っ暗です。ブッシュ・ジュニアが南アメリカではみなラテン語を話していると思っていたのはお座興ですが、トランプになると唖然として二の句も継げません。知識がないだけではなく、他人に負けるのが異常に悔しい性格で、すぐに嘘と分かるようなことでも、闇雲に主張せずにはおかれないことから、後で余計に物笑いになるのですが、同じようなことを何度繰り返してもカエルの面に何とやらです。前回に述べた醜聞材の件では、ロシアがセックスビデオのことを認めるようなことはないでしょう。そんなことをすれば恐喝材料がなくなるからです。伝家の宝刀は抜かないところに意味があります。しかし悪ガキのいじめっ子を大統領の座に据えたことで、これから米国の国益を損なうようなことが何度も起こりそうです。そうすれば、弾劾訴追を考えている人たちも少なからずいるようですから、この先は波乱万丈と言えます。