最近は従来常識の型破りとなる
法螺吹きトランプに関連しての新語( Neologismus – neologism – néologisme )をよく見かけます。最新語ですから手元の辞書にはまだ載っていないものばかりです。本ブログでも既に紹介した「ポスト事実」もそうですが、今回の Kompromat, n. は元はと言えばソ連の KGB で使用されていたジャーゴン компромат に由来するものです。スキャンダルの種になるようなビデオや文書など醜聞材料のことを言いますが、ドイツ語で説明すれば、komprimitierendes Material、英語なら compromising material となります。1999年にロシアのスクラートフ検事総長がエリツィン大統領の汚職を追及していたところ、検事総長と売春婦たちが写っているとされるセックスビデオが現れ、その真偽が定かではないのに検事総長は失脚し、エリツィンは追及を逃れることができました。当時の SFB (連邦保安局、KGB の後進)長官がプーチンで、この功績で一躍エリツィンの後釜に収まることができたようです。
Kompromat can be acquired from various security services, or outright forged, and then publicized by paying off a journalist. Widespread use of kompromat has been one of the characteristic features of politics in Russia and other post-Soviet states. (WPe)
醜聞材は、様々な公安機関から取得したり、全くでっち上げられたりして、ジャーナリストに金を払って公表されるものとなる。醜聞材を広く使用するのは、ロシアおよびその他のソ連後継国家の政治的手段の一つとなっている。(ウィキ英)
今回はトランプがモスクワのホテルでコールガールを呼んでセックスパーティーをしたとか、していないとか、その証拠となるビデオがあるとか、ないとかいう噂が数か月前から出回っています。トランプ自身は知らない女性の秘所に手を差し込むのが趣味のようですが、このビデオの話が本当だとしたら、米国大統領になるトランプの急所を掴んで、恐喝できる材料になると言うことです。大統領が恐喝されて他国か誰かの言いなりになるようでは、主権国家足りえません。戦前の日本でも非合法共産党の中枢にスパイが潜入していたということがありましたが、米国大統領がロシアの回し者なら即弾劾訴追ものです。
Laut dem am Dienstag bekannt gewordenen Bericht eines pensionierten britischen Geheimdienstmitarbeiters hat Russlands Geheimdienst FSB Donald Trump 2013 gezielt in eine Falle gelockt, um dabei kompromittierendes Material, kurz „Kompromat“, über ihn zu gewinnen. […] Die Methode ist mit der Verbreitung von „fake news“ verwandt, die Russland ebenfalls vorgeworfen wird, doch sie wirkt gezielter. Mal werden dazu unschöne Details aus deren persönlichem Leben ausspioniert oder erfunden, mal werden diese – wie angeblich bei Trump geschehen – in peinliche Situationen gelockt, in denen sie abgehört oder gefilmt werden. (SZ, „Kompromat“ JHL, 12.01.2017)
この火曜日に知られるようになった英国のある退役諜報機関員が表したレポートによると、ロシアの諜報機関 SFB が、2013年にドナルド・トランプの信用に傷をつける材料、手短に言うと、醜聞材を手に入れるため、トランプをターゲットとした罠を掛けたと言うことである。[…]この方法は同様にロシアがしているという「フェイク・ニュース」の拡散と似ているが、それよりも標的が絞られている。時にはそのため標的となる人物のプライベートな部分から好ましくない事柄を詳細に暴いたり、時にはこの人物をスキャンダルとなるような状況に誘き寄せ――実際トランプに起こったことだと言われているが――、そこを盗聴したり、ビデオ撮りしたりする。(『南ドイツ新聞』「Kompromat」)
もちろんのこと、当のロシアはこんな話は全否定しています。ただ情報源が元MI6機関員で、その筋からは信頼置けると言われている人物ですから、どうなのでしょうか。ソーシャルメディアに氾濫するフェイクニュース(ガセネタ)ならトランプのお手の物ですが、今回はトランプもびっくりでしょう。諜報機関の間では昔から故意に偽情報を流す情報攪乱( Desinformation - disinformation - désinformation )戦術がありますが、いつの時代も人間のすることには、似たところがあるようです。
Mit Ironie in der Stimme fasste sie [Olga Skabeewa, die Moderatorin der Politikshow 60 Minuten auf dem Staatssender Rossija 1] das gerade in den USA heiß diskutierte Trump-Dossier zusammen: Russlands Geheimdienste sollen den Milliardär schon lange vor seiner Kandidatur durch sogenanntes Kompromat, also zur Erpressung geeignete Informationen, an die Leine genommen haben, um ihn dann mithilfe von Hackerangriffen ins Weiße Haus zu hieven. (Die Zeit, Maxim Kireev, 12.01.2017)
ロシアの政治トークショー司会者は声に皮肉を込めて現在米国で大問題となっているトランプ文書のことをまとめて紹介した――ロシアの諜報機関が億万長者のトランプに、大統領選へ立候補する遥か以前に、いわゆる醜聞材、すなわち恐喝できるに足る情報を使って、首輪を付けてリードに繋ぎ、ハッカー攻撃を援用してホワイトハウス入りをさせたと言うことである。(『ツァイト』紙、マキスィム・キレーフ)
プーチンが首相や大統領になった経緯を鑑みれば、一概にフェイク・ニュースだと決めつけるわけにもいきかねます。まして次期国務長官や要職に親露派を当てているところを見ると、既に醜聞材の効果が表れていると勘ぐる向きもあるようです。
Gelegentlich griff man sogar zu Schauspielern, um Kompromat zu produzieren. So soll es etwa bei einem 1999 im russischen Fernsehen gezeigten Sexvideo gewesen sein, das angeblich den damaligen Generalstaatsanwalt Jurij Skuratow mit zwei Prostituierten zeigte. Auch bei den laut US-Geheimdiensten von russischen Hackern auf den Servern der Demokraten erbeuteten und anschließend über Wikileaks veröffentlichten E-Mails, die Hillary Clinton im Wahlkampf schadeten, handelte es sich um Kompromat. Es war das erste Mal in jüngerer Zeit, dass diese Methode auch international eingesetzt wurde. (SZ, dito)
醜聞材を作るのに、時には俳優さえ使うこともある。これは例えば1999年にロシアのテレビで流された、当時のユーリー・スクラートフ検事総長が売春婦2人と写っているとされたセックスビデオの場合そうであったと言われている。また米諜報機関によれば、ロシアのハッカーが民主党のサーバーから盗み、ウィキリークで公開された、選挙戦でヒラリー・クリントン候補に不利となった電子メールも醜聞材であったと言うことである。これは最近この方法が世界的に使われた最初の事例となる。(同上)