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La source d'Ingres,  Paris  ©DeepStSky 

0044 Deutsche Wörter im Englischen ドイツ語由来の英語の言葉

2016/08/04 投稿

 ドイツ語から英語に入った言葉(ジャーマニズム)は

あまり多くはありませんが、別項で論じる zeitgeist, weltschmerz, weltanschauung, schadenfreude 以外の主な言葉を以下に列挙してみました。

 昨今はメキシコや中南米からの移民が多くなっていますが、英国以外では、国民に占める割合が20数%にもなっていた米国民の出自に占めるドイツ移民の割合や、また一時ドイツ語が国語となりかけた時もあったと言われていることなども考えてみると、米語中のドイツ語由来の言葉が意外と少ないのが不思議なくらいです。

 kindergarten 幼稚園 発音は【キンダーガルトゥン】や英語的に【キンダーガードゥン】。この言葉は、まず英国で使われ始めたようです。同義語としては nursery や preschool があります。また kindergartner と言えば、まず第一に幼稚園の先生、次いで幼稚園児を意味することになります。ドイツ語では Kindergärtner(in) は幼稚園の先生の意味しかありません。

       "Madre!" one of the nuns called; it sounded like Sister Gloria's voice. [...] "Mother!" the orphans in the kindergarten responded. "Now and foreever, you will be my guide." / The kindergartners were in the chapel, one floor below Juan Diego and Lupe's bedroom. On saints' days, the responsive prayers drifted upstairs before the kindergartners began their morning march. Lupe, either awake or half asleep, would murmur her own prayer in response to the kindergartners' ode to the Virgin Mary. (Irving, Avenuw, S. 149)
       「聖母さま!」尼僧の一人が呼びかけた。シスター・グロリアの声のようだった。(…)「聖母さま!」幼稚園の園児たちが答えた。「今より永遠(とこしえ)に、私を導いてください!」園児たちはチャペルに集まっていた。フワン・ディエゴとルーペの寝室の一階下である。聖人の日には、園児たちが朝の行進を始める前にその祈りが上まで聞こえてくるのだった。ルーペは、目覚めているのか、寝惚けているのか、園児たちの聖母マリア讃歌に答えて、自分一人の祈りを口ごもるのだった。(アーヴィング『神秘大通り』)

 Gesundheit!「お大事に!」――誰かがくしゃみをした時に、周りの人が言う言葉です。英語で bless you! とも言いますが、「神の祝福あれ!」などといかにも宗教臭が強すぎて多くの人から避けられ、英語圏で gesundheit! が広まったようですが、近頃は何も言わない場合も増えています。東欧のユダヤ人が使っていたヘブライ語交じりのドイツ語方言であるイディッシュ語(Jiddisch / Yiddish /yiddish)を通してアメリカに伝わったようです。フランスでは、à vos/tes souhaits やまた à tes amours、フランス語圏スイスでは santé と言っています。1992年のシルヴェスター・スタローン主演の映画『刑事ジョー ママにお手上げ』(Stop! or My Mom will Shoot)で、年は取っていてもまだまだかくしゃくとしたお母さんの潜んでいる部屋の隣で悪党の一人がくしゃみをした時に、お母さんがすかさず Gesundheit! と言ってしまいました。言った後で、その部屋に隠れていたことに気づかれるということに咄嗟に気づきましたがもう後の祭りです。そうなると後はもう三十六計逃げるに如かずです。

 なお、フランス本国では、santé は「乾杯」で、ドイツの Prost, Prosit, zum Wohl!、英語圏の cheers, to your health, chin chin! にあたります。

 ドイツでは携帯電話のことを Handy と呼んでいますが、これはドイツ製英語で、英語圏では通じないはずの言葉なのですが、最近はアメリカ東海岸一帯に急速に広まり、mobile phones cellular phones を駆逐する勢いで、すでにスラング辞典などにも掲載されています。

 ソーセージをパンに挟んでケチャップやマスタードをたっぷりかけたホットドッグ( hot dog )は、その形がアナグマ狩りのために足を極端に短くした品種で、現在のドイツでは Dackel と呼ばれているダックスフント(dachshund = Dachsアナグマ + Hund犬)にどこか似ているところから来たのでしょう。ドイツのフランクフルト市( Frankfurt am Main )が、1847年に当地でホットドッグが発明されたのだと主張していますが、その是非はともかくとして、移民と共にアメリカにもたらされ、19世紀末のシカゴ万国博覧会を切っ掛けに爆発的にアメリカ全土に広がったものです。このフランクフルトのソーセージがフランクフルター・ヴルストと呼ばれているもので、実際はウインナーと同じようなものですが、現在のドイツではこれらに似てはいるが、もっと太目のボック・ヴルスト( Bockwurst )の茹でたものを丸いブレーチェン( Brötchen )にはさんでからしをつけて食べるものが、焼きソーセージ( Bratwurst )と並んでキオスクや屋台で売られています。

 日本でもお馴染みのhamburger(ハンバーガー)は、ハンバーグ・ステーキの略でしょうが、ハンブルクからのドイツ移民が新大陸にもたらしたものと言われています。今では米企業のマグドナルドが全世界に進出しているため、ドイツでもハンバーガーで通じますが、当のドイツでは一般に FrikadelleBulette などと呼ばれていました。

 19世紀半ばにミュンヘンから発祥した屋外飲酒施設の Biergarten も、同じシカゴ万博に設けられたビアガーデン(Beer Garden )を元祖として、その後一挙にアメリカで広まることとなりました。同じく英国や米国の主流のビールであるラガー( lager )もドイツ語起源で、倉庫( Lager )から来ています。そこで下面発酵( untergärig )させ、低温で長期間熟成させたビールがラガーで、さっぱりした味わいのビールです(ビールについては、別項の0039 Bier - beer - bière ビールを参照してください)。

 日本でも好きな人が多い baumkuchen は、英語では pyramide cake とも呼ばれます。豚の丸焼きのように何層かの色違いの生地の層を串刺しにして回転して焼くところから、横断面に年輪の模様がつくことになります。

 Gummi bear, gummy bear はもちろんのことドイツ語の Gummibär (グミベア)で、カラフルなフルーツ風味のゼリー様のお菓子です。もともとは熊の形でしたが、今では色々な形があります。最近は、ドイツ生まれのシングル曲『I am your Gummy Bear』が各国でヒットしています。

 Muesli は、コーンフレークなどシリアル(穀物)にドライフルーツやナッツなどを混ぜて、ミルクやヨーグルトに浸して食べる朝食のミューズリー【ミュースリー】 Müsli(ドイツ)、Müesli(スイス)です。

 ドイツが本場の Frischkäse 英 cream cheese の一種の Quark も一応英語にはなっていますが、普通には素粒子の構成要素と取られる場合が多く、curd の方が一般的に通じます。フランスでは、fromage blanc, séré, caillé と呼ばれています。チーズケーキ( Käsekuchen または Quarktorte )は、これを本体にしてケーキとしたもので、日本でもニューヨーク・チーズケーキでよく知られたものとなっていますが、ドイツのものはべっとりとしたアメリカ製に比べると、ふわふわした中にもやや湿ったところのあるという食感です。

 アメリカの屋台で定番の pretzel (プレーツェル)は、南ドイツの Bretzel の新大陸での再現です。細長くした生地を円っぽい馬蹄や緩やかな結び目のような形にしたパンの一種で、ごく小さな種類のクラッカーのようなものまであります。ブッシュ・ジュニアがホワイトハウスでテレビを見ながらプレーツェルを頬張っていて、あやうく窒息しかけたことがありました。この時に天国へ行っていたなら、イラクやその他のところでの死者も大幅に減っていたかも知れません。とは言ってもそうなると、当時の副大統領のチェイニーが大統領に昇格していたでしょうから、もっと酷いことになっていたかも知れませんが。何しろこの男の関係する企業群がイラク侵攻でぼろ儲けをしたと言うことですから、さらに何をしでかしていたか、分かったものではありません。

 ラスク( rusk )と言えばパンに砂糖などをまぶしてもう一度焼いた菓子ですが、これはドイツ語起源の zwieback の一種と言えましょう。ただ Zwieback の場合は、その名の通り二度焼いただけで、砂糖やバターなどはつけてありません。

 米語の deli (惣菜屋)は ドイツ語の Delikatessengeschäft に由来します。Geschäft は「商店」のことで、前半は delikat(美味な)+ Eseen (食物)という構造です。

 ダックスフント以外にもドイツ語由来のイヌの品種名も若干あります――スピッツ( spitz 独Spitz )、ドーベルマン・ピンシェ( Doberman Pinscher 独Dobermann )、ロットウェイラー( Rottweiler )、レオンバーガーまたはレオンベルガー(Leonberger )、ワイマラナー( Weimaraner )、ジャイアント・シュナウザー(giant Schnauzer独Riesenschnauzer )やミニチュア・シュナウザー( miniature schnauzer独Zwergschnauzer )など。さらにドイツ由来の品種にシェパード( German shepherd 独Schäferhund )、セント・バーナード( St. Bernard 独Bernhardiner )、ミニチュア・ピンシャー( miniature pinscher 独Zwergpinscher )、ポメラニアン( Pomeranian 独Pommer  = Zwergspitz )などもあります。

 フェーン現象の foehn はドイツ語の綴りのまま föhn と綴られることもありますが、ドイツ語の Föhn は「山岳を越えて吹く高温で乾燥した風」のことを言い、特にアルプスを越えて南ドイツに吹き下りてくるフェーンがよく天気予報に出てきます。現在のドイツでは、ヘヤー・ドライヤーのことをフェーンと呼んでいます。

 少し学術語っぽいですが、hinterland(内陸地、後背地)は英語で直訳すれば behind-land にあたるドイツ語 Hinterland です。港の背後の都市圏で、経済的に相互の密接な関係が見られます。イギリスのマンチェスターなどでは、綿工業の衰退とともに港湾関係も没落するということになりました。

 ディーゼルエンジンの diesel はオーストリアの物理学者 Rudolf Diesel に因んだものです。ディーゼルエンジン用の軽油がドイツではディーゼルと呼ばれます。これは灯油(Heizöl)と同じものですが、掛かる税率が違うため、赤く着色して売られていました。特に農家などではディーゼル車に安い方の灯油を注油して使用することが多く、一種の租税回避として取締りの対象となります。

 第二次世界大戦前は、ドイツを中心として地政学( Geopolitik )が盛んで、その術語である lebensraum (生存圏)と言う言葉がよく聞かれました。日本も例えば満州が日本にとっての欠かせない生存圏であるなどと、勝手な論法で大陸侵略の学問的準備工作がなされていました。ソ連が崩壊した後の世界秩序に関しても、またや生存圏という言葉が復活してきたようです。

 ドイツ語の皇帝を表す kaiser と言う言葉も emperor と同義で使われることがあります。Kaiser はもともと皇帝になろうとして暗殺されたユリウス・シーザー( Julius Caesar )の個人名が普通名詞となったものです。

 太陽系の惑星間物質が太陽光を反射して起きる黄道光( zodiacal light )に類似の現象の対日照( gegenschein )も天文学のドイツ語由来です。

 日本語でもそうですが、登山関係用語にはドイツ語起源の言葉が多く見られます。よくワンゲルと略されるワンダーフォーゲル( Wandervogel 独語:渡り鳥)などもそうでしょう。これは 19 世紀も終わろうとする頃ベルリンのある高校の教員が提唱したもので、干からびた古典ばかり勉強していてもつまらないから、自然の中に入って、植物学・動物学・博物学・地理学・地質学・物理学やさらに地場産業など実地学習をしようとした運動で、やはり当時盛んになってきたユースホステル( Jugendherberg)運動とともにドイツの国境を越えて各国にまで広まりました。

 崖からザイルを下ろして降下することを abseil と言います。

       The team had planned to abseil down the cliffs“ (WPd, BBC News)            登頂チームでは崖からザイルで降下することにした。

 アメリカではbackpack という方が普通ですが、日本と同じように rucksack と呼ぶ場合もあります。

 日本語にもカラビナとして入った登山道具のKarabinerもドイツ語の Karabinerhaken から来ています。開閉できる部品がついた金属リングです。カービン銃または騎兵銃( Karabiner)を背負うためのベルトに取り付けるフックが始まりでしたが、色々と応用されるようになりました。

 体操の選手を turner とも呼びますが、一般的には gymnast のことです。Turnerには他にろくろ師や回転機という意味もあります。

 アメフト用語( american football )に blitz というのがありますが、これはドイツ軍( deutsche Wehrmacht )の電撃戦( Blitzkrieg )から来ているもので、守備するメンバーが一時的に持ち場を離れて、大挙して猛攻撃をかけることです。

 Angstもドイツ語から来ています。

       Allen, in his comic response to the angst of death, is treating something of a common problem. (WPd, Newsweek, 23. Juni 1975, S. 40)
       ウッディ・アレンは、死への不安に面白おかしく対応することにより、ある種の一般的な問題を取り上げている。(WPd、『ニューズウィーク』誌)

 日本語にも入ってきましたが、ドイツ語の Kitsch が英語でも kitsch として安っぽい工芸品やお涙頂戴劇などのことを言います。

英語では第二次大戦中は日本人を軽蔑してジャップと呼んでいましたが、同じく敵国のドイツ人は Kraut または kraut 【クラウト】またフランス人に習って Bosch 【ボッシュ】と呼ばれていました。英国では Fritz と言ったり、Hun 【ハン】と呼ぶ方が多いようです。後者は第一次世界大戦から使われたものでローマ帝国まで侵入してきたアッチラ率いるところのフン族、多分匈奴を指しています。英語ではさらにドイツ人やドイツ人男性を指して Jerry などとも言ったりしますが、良い感じを込めた言い方ではありません。

 映画にもなっていましたが、poltergeist もドイツ語由来です。突然机や椅子がゴトゴトと小刻みに揺れ出し、食器棚も振動してカップや皿がガタガタと鳴ったりする現象を引き起こすと言われる、言ってみればガタガタ霊です。

 音楽用語などにもドイツ語起源が多くあります。leidmotif (Leitmotiv), Lied & Lieder, Walzer (waltz), Ohrwurm (catchy tune) やモーツァルトの eine kleine Nachtmusikdie Zauberflöte (魔笛)などはドイツ語そのままでも通る時もあります。

 1980年代からドイツを中心とする北欧・中欧・東欧で樹木が大量に立ち枯れするようになった大規模な森林被害 Waldsterben は英語では forest dieback と訳されますが、独語のまま waldsterben と言われることもあります。

 大学教授の退官記念出版や退職記念論文集 Festschrift は commemorative publication となりますが、英語でもそのまま festschrift で通じる場合もあります。